ゴシップ・ガーデン
元カノは顔をしかめて、
目線を落とし、
フォークでクルクルと
パスタを巻き付けた。


だけど、
巻き付けたパスタを口にせず、
話続ける。


『大学のころ、私と修ちゃん
つき合ってたの知ってる?』


『…はい』



『修ちゃんが大学院に進学するか
就職するかで悩んでたとき、

私は就活始めたころで、
落ちまくっててさ、
いっぱいいっぱいだったし、
ろくに話聞いてあげられなかった。

後悔してるんだよね。

修ちゃんが
大学院に行きたかったこと、
私は誰より知ってたはずなのに、
背中を押してあげなかったこと。

夢を断念して、
別の道に進むことになって、
どんな気持ちでいたのか、
ずっと気にはなってたんだけど。

別れて、卒業して以来、
千夏の結婚式で会うまで、
連絡することもなかった。


修ちゃんが、
高校の先生にやり甲斐感じてたら、
それでいい。

ただ、まだ夢を諦められずに
いたとしたら…。

こんなチャンス
もう二度とないと思うの。

だから今度こそ、
自分のやりたいこと
やって欲しいんだ。

もし、進むきっかけを
欲してるだけだとしたら…、

シイナちゃんにも、
修ちゃんの背中を
押してくれないかなぁと思って』



『…どうして
あたしに頼むんですか?』



怪訝な顔したあたしに、
元カノはニッコリ微笑んだ。


『だってそれはほら、
シイナちゃんが
修ちゃんのことを好きだから。

結婚パーティーのとき、
修ちゃんのこと
ずっと見てたでしょう?

気づいてたよ。
私のこと気にしてるのも。

かき氷一緒に食べたとき、
確信したんだよね。

本気なんだって。

だからあとは任せようと思って。

私はもう、
修ちゃんに親身に関われないから』


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