ゴシップ・ガーデン
紗彩さんのサッパリした笑顔と、
口調には、まるで嫌みがなかった。



初めて見たときから、
紗彩さんのことが好きではなかった。



嫉妬で渦巻いてた自分は
なんてみっともないんだろう。



初めてまっすぐな思いで
紗彩さんの顔が見れた気がした。



やっぱりすごくキレイな人だった。


悔しいけど。


最初の印象って
あてにならないんだわ。







東京の大学内。


生い茂った木々で日陰になった
掲示板の前で

あたしとヒオカ先生は
向かい合っていた。



人が近くを通っても
気にしなくていいなんて最高だ。



紗彩さんとの会った夜以来、
どうしても頭をよぎること。


もし、
ヒオカ先生が大学院に行って、
あたしも大学受かって
同じ大学に通えるようになったら
…って。



…なんて、
受かるともわからない、
どう転ぶともわからない
先のことを妄想して

浮かれるのはやめよう、
と自分に言い聞かせた。




「紗彩から聞いた。
佐野さんと“仲良くなった”って。

“で、大学院のこと話した”って」


と、ヒオカ先生が言った。


なんだ、聞いてたんだ。



「…勝手にヒオカ先生の話
聞いたりして、
気に障ったらならゴメン」



「いや、いいよ。
話したのは紗彩だし。

でも、紗彩がどんな風に話したか
詳しいことは知らないけど、

おおかた、
大学に戻るように勧めてって
言われたんじゃないの?」


「…正解」



ヒオカ先生は、
やっぱり、という顔をした。



だったら、こっちも話が早い。


「…お母さんのお体は?」


家族のこと
ちゃんと聞くの初めてかも。


ていうか
弟がいたのも初耳だったし。

遠慮がちに尋ねたら、


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