ゴシップ・ガーデン

「楽しい…かぁ、
難しい質問だな…うーん」



ヒオカ先生は、
困ったように笑って首をひねって、
少し間をあけて答えた。


「…うん、でも、
大変なこと多いけど、
やり甲斐あるって思うときは
あるよ」



「…そっか。なら、いんだけど。
紗彩さん、心配してたから。

ホントは大学に戻りたいんじゃ
ないかなぁって」



「紗彩が言ったことは、
何も気にしなくていいから」



紗彩。

自然に呼び捨てにする。


良いなぁ。呼び捨て。


別れた今でも、対等というか、
気を許してる相手なんだ、
っていうか。


サクサクと、胸の奥に突き刺さる。


すねたような気にかられた。



ねぇ、どっちが告白したの？


別れた理由は何？



「…ねぇ、ヒオカ先生、
紗彩さんのこと…」



紗彩さんのこと、
今はどう思ってる？



漠然と聞いてみたくなったけど、
直球では
やっぱ聞きにくくてためらった。



「ん？何？」



でも、知りたい。



「ううん、…紗彩さん、
結婚するって言ってたね」


控えめな口調で聞いてみた。


言ってから、
意地の悪いこと
言っちゃったかなと後悔した。



紗彩さんへの未練とかが
かいま見えたりしないかな、
と試すような気持ちで、

ヒオカ先生の顔色をうかがったけど、



「そうだね。
ついに同級生で結婚ラッシュが
始まっちゃったかな。

いつの間にか自分もそういう年に
なったんだなぁって。
年取ったなぁって思う」


気に留めた様子もなく
ただの感想を述べるように
さらりとヒオカ先生は答えたから、



「そう…」


逆に拍子抜けしちゃって、

ヒオカ先生の顔を見たら、
まっすぐ目が合った。