ゴシップ・ガーデン
後ろめたい気になって
思わず目をそらした。



遠回しに相手の出方を見るとか
そういう高度な手法は
あたしには向いてないみたい。



挙動不審に見えたのか、
ヒオカ先生は、不思議そうに
あたしをじっと見下ろしている。


「複雑そうな顔して、どうかした?
何か言いたいことあるなら
言って?」



…ここまできたら、
この際言ってしまおうと思った。



あたしが知ってること。


…ヒオカ先生が、


「紗彩さんと…、
付き合ってたこと知ってる」



思いきって口に出したけど、
ヒオカ先生の顔が見れなかった。




「…それも紗彩から?」


特に乱れのない、
いつも通りのヒオカ先生の声が
あたしの皮膚に反射した。



「…ううん、
それは別の人から聞いた。

…ゴメン、結果的に、
過去を探ったみたいになって…、
ゴメン、気分悪いよね…」



あたし、
ストーカーみたいで気持ち悪い…。


気まずくなって
ますます目線を外した。




ヒオカ先生が、
ふっと笑った気配を感じた。


「別にいいよ。
佐野さん、さっきから
謝ってばっかり」



顔を上げたら、
ヒオカ先生は、フワッと笑った。


胸の奥に、キュンと染み渡った。



「隠してるわけじゃないし、
もう終わったことで、
思い出の一つだから」



「そっか…」


よかった。

ヒオカ先生に隠し事したくないけど、嫌がられるのも嫌だ。




一度、呼吸をととのえてから、ヒオカ先生を見上げた。



今回の、本題に戻らないと。



ヒオカ先生からの話を聞くために、
今ここにいるんだから。



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