ゴシップ・ガーデン
「…話って何?」


緊張しながら切り出した。



「うん、…」


ヒオカ先生が口を開いて
何か言葉を発しようとした瞬間、



「あ、ちょっと待って!」


怖くなって制した。



話って何?って聞いたとき、
ヒオカ先生、
ふっと真顔になったから。



話を聞きたくないと
思ってしまった。



何を言われても、
聞こうって決心して
出てきたっていうのに。


急に心が乱れた。



「…覚悟がつかなくて」


苦笑いした。

無理して笑った。



「逃げてんの。
ごめん、今さらだよね。

だけど、少しでも、
先伸ばしにしたくて逃げてる。

だって、…怖くて…」



何言われるんだろうって怖くて。


ハッキリとフラれるんだろうか。


関係を“なかったことにしよう”
って言われてしまうんだろうか。


悪いことしか考えられない。



話を先伸ばしにさえすれば、
もう少しこうやって話したり
側にいられるんじゃないかって。


未練がましいなぁ。



改まって話なんかしたら、
こんな風に、あいまいなまま
繋がっていられる今から、
関係が変わってしまう。


変わるのが怖い。




あたしを見つめるヒオカ先生の目が
ゆっくりと細くなり、
柔らかく苦笑いした。



「俺も。佐野さんと同じ。
先伸ばしにしたいと思ってる。

だけど、このまま
あいまいに逃げ続けるのは
ほんとにズルイと思うから。

きちんと向き合って
話さないといけないと思うから。

俺もね、結構な決心で
ここまで来たんだよ」




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