ゴシップ・ガーデン
やっぱり、と思ったけど、
思ってた以上に、
ダメージがあった。


開いてたシャッターが
目の前でピシャリと
閉められたような。


手が小さく震えている。




「…ゴメン」


かすれた声で謝って
うつむいたヒオカ先生の顔を見て、
少しだけ気は和らいだ。


辛いのは
あたしだけじゃないって
わかったから。



「謝らないで。

ヒオカ先生には、
ほんとにたくさん助けてもらって
感謝してるんだから」



「…俺は何もしてないよ」



「ヒオカ先生と再会してから、
色んなことがあった。

色んなことは、全部好転したよ。

ヒオカ先生と
バラの前で再会できたから、

お父さんと縁を切らずに済んだし、
本当に父親の最期を
見送りにも行けたし、

お母さんとも何だかんだで
上手くやれてるんだよ」



ニッコリ笑顔を見せたら、
ヒオカ先生もやっと微笑んだ。


「佐野さんが、
これまで頑張って
積み重ねてきたものの
成果が出ただけだよ」



「ううん。違う。

あたし一人だったら、
全部投げ出してあきらめてたよ。

今までずっとそうだったもん。

逃げることばっか考えてた
あたしが、
地元の大学に行ってもいいかな
なんて、思えるようになったのも、
ヒオカ先生と出会えたからだよ」



何より、恋を知った。



母は、
あたしが恋をしてることに
気づいてる。


いつの間にか、
母はあたしをシスターと
呼ばなくなったから。




「色んなことの
山場は超えた感じがしてる」


寂しさに唇を噛み締めた。



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