ゴシップ・ガーデン
「うん。
悪口言うわけじゃないけど、
千夏姉の彼氏の友吾兄は
つぶれて寝っぱなしだったけど、

彼氏だから、
しょっちゅう来てたけど、
家事を手伝ってたの
見たことなかったんだ」



でもヒオカ先生は、
酔ってても
きちんと片づけてた。


悪酔いしない人なんだって
印象良かった。


千夏姉の友だちの中で
一番常識がある人に見えた。




「あたしだったら、
彼氏にするなら、
友吾兄より
ヒオカ先生みたいな人が
いいのにって思ってたもん」



「…そうなんだ」

照れ隠しか、
反応に困ってか、

先生はあいまいに
はにかんだ。





ひとつ、思い出すと

次々記憶って
戻ってくるんだなぁ。



あの夏は、
比較的イイ夏だった。


千早ともたくさん遊べたし、

千夏姉にも
いろんなところに
連れていってもらった。
友吾兄の運転で。


あたしにとっては
楽しかった夏だった。


その前後が
最悪だっただけに。





あの頃あたし、

ヒオカ先生のこと
何て呼んでたっけ?

たぶん、「お兄さん」。


どの友人たちのことも
例外なく「お兄さん」
「お姉さん」だったから。


名前覚える気なかったから。

だって、あたしは
ただの居候で、

千夏姉の友人たちと、
この先関わりを
持つことなんて
ないと思ってたから。


誰の名前も
率先して聞いた覚えなかった。





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