ゴシップ・ガーデン
「シスター。
ウキウキしてるわね。
ああ、もうすぐ誕生日か」



仕事から帰ってきて、
上着を脱ぎながら母は
カレンダーをながめて言った。


そしてすぐに
いつもと同じ皮肉を言う。


「誕生日なのに、
彼氏と過ごさないで
どうするの」



もう聞きあきた。



「シスターみたいな生活は、
シスターでもないかぎり
楽しくもなんともないでしょう」



でも、最近のあたしは
母のたわ言を聞き流す
余裕があるみたい。


お風呂上がり
タオルで髪をふきながら、
あたしは母の脱ぎちらした上着を
ハンガーにかける。



「で?どんな洋服買ってもらうか
決めたの?シスター」


母はテーブルに広げたまま
置きっぱなしの
ファッション雑誌をのぞいた。



「まだ」

物色中。



「そう」


抑揚のない母の返事。

後ろ姿で表情は見えない。

そのまま母は
お風呂に向かった。



あたしは、
ベランダの戸をあけ、
ミニバラの鉢の前でしゃがんだ。


まだかたく閉じられたままのツボミ。


いったいどんな色の花が
咲くんだろう。



血はつながってなくても
優しい父がいて、

親しい先生もいる。


うん、悪くはない。



あたしはツボミに
思いを馳せた。




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