ゴシップ・ガーデン
『相手は会社の同僚なんだけど』



あたしは黙って
父の告白を聞いていた。


反対に、
いつになく父は饒舌だった。



40代前半の父。

相手の女性は
まだ20代後半。


2年くらい前から
同じ仕事をしたのがきっかけで、
付き合うようになったらしい。


そんなこと、
全然知らなかった。




『おめでとう、よかったね』


ケーキを前に、滑稽だった。


すぐわかった。


このおしゃれなカフェは、

父があたしのためだけに
探したわけじゃ、ない。


でも、父の嬉しそうな顔を
曇らせてはいけないと思った。



あたしは笑顔で、
父を祝福した。




母みたいな
とんでもない女に引っかかって、

その娘の面倒まで引き受けた、
あわれで優しい人。


たぶんあたしが思うより、
いっぱい苦労しただろう。


離婚して離れ離れになったとき、
あたしは本気で思っていた。


父には本気で幸せに
なってほしいって。



そして多分きっと、

幸せって
なんだろうって考えたとき、

思ったのは、
親でも子でもなく、

寄り添ってくれる異性が
いることだって。




そして父は、

その幸せをやっと
手に入れたのだ。




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