ゴシップ・ガーデン
寂れた旧校舎の影が落ちる静かな裏手。


緑が、夕日の色を浴びて
きらきらと、そよぐ。


青々としたバラの株が
たくさん広がっている。


ずっと2階の図書室から見てたバラが、
目の前に広がっている。



裏庭に立ち入ってまで
バラを見るのは初めてだ。


近づいて見ると、
ところどころ花が咲いている。



赤、ピンク、白、黄色…。



つぼみが
たくさんついている。


よかった、
今回もたくさん咲きそう。


うれしくなってきた。



でも、駐輪場ができたら、
どうなっちゃうんだろう…。




夕暮れの裏庭に
サックスのメロディーラインが響く。


高いところから聞こえる。


たぶん4階で練習してるのかも。



でも夕暮れに、
サックスは好きじゃないと思った。


やめてよ、だって、
なんだか無性に物悲しい気分に
なるんだもん。




人の気配がして振り返ったら、
彼が立ってた。


ヒオカ先生。


バラの水やりに来たみたい。


白衣を腕まくりして、
手にはホースを持ってる。


あたしを見て、
「あ」って顔した。

また。


初めて会ったときも
そんなだった。



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