ゴシップ・ガーデン
あたしは手を離して、
体の向きを変えようとした。



でもヒオカ先生は
あたしの肩に置いた手を
離さなかった。




「こっち見て」


ヒオカ先生の
まっすぐの瞳が真剣だった。


「ちゃんと話して。

前言ったよね?

俺が聞くって。

そんな泣くのこらえて
何を我慢してんの」




それは“先生”として
心配してるのか、

それともただの
“男の人”なのか、
見わけがつかなかった。

そんなこと
どうでもよかった。




思考が停止して

しばらく
吸い寄せられるように
見つめ合った。



身をかがめて、
あたしの顔をのぞきこんでる
ヒオカ先生の唇が、


もっと近づいて

あたしの唇に重なった。




…どうして、
こんなこと…



考える間もなく
ヒオカ先生は、
緩くあたしを抱きよせて
頭を撫でた。


…あったかい。



急に近づいた距離感に、
何がおこったのか
わからなくって、

戸惑いつつも

あたしは不思議と
落ちついていた。



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