ゴシップ・ガーデン
あたしが高校1年の春。

ヒオカ先生も一年目の新任。


初めて校舎ですれ違ったとき、
あたしの顔見て
「あ」って顔したんだ。


あたしを知ってる?

そんなはずないのに。


何でかわかんなかった。



でも特に話しかけて
くるでもなかったから、

気にしなかったら、
そのままだった。


それだけ。


あたしはもともと
人と関わるのが苦手だし、

三年間、化学はとってたけど、

ヒオカ先生が担当する学年が違ってたから、
一度も関わることはなかった。



でも入学してすぐ、
この旧図書室から、

ヒオカ先生がバラを育ててるのを
見て知った。



あたしがバラを見てたのを

ヒオカ先生が知ってたかは
知らないけど、


たまに校舎ですれ違うときとか、
なんとなく目が合うような
気がしてた。


気のせいかもしれないけど。



けど、
まったく接点がないとはいえ、
同じ高校の教師と生徒。



ヒオカ先生は儀礼的に微笑み、
会釈をした。


あたしも反射的に
会釈を返した。



ヒオカ先生の
真面目なメガネの下は、

賢そうに整った
喜怒哀楽の薄そうな顔。


神経質って感じじゃないけど、

爆笑とかしてる姿が
想像つかない感じ?







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