ゴシップ・ガーデン
会釈したものの黙ってたら、
ヒオカ先生の口が開いた。


「新しい図書館は、
広くて本も増えていいでしょう?」

ほんのちょっとだけ鼻にかかった低い声。



「え」て顔したら、

「ここの図書室きてたよね。
ここからよく見えてたから」


ヒオカ先生は
2階の窓を見上げた。

ちょうど、あたしが
よく見てた窓。


ドキッとした。


あたしが見てたの気づいたんだ。

無性に恥ずかしくなった。


「バラが…!!
キ、キレイだったから…」


うろたえるあたしをよそに、
ヒオカ先生はバラに
水をあげはじめた。



ちらっと横顔をみると、

先生の口元がゆるんでいる。


「場所が悪いからだと思うんだけど、
あんまり見に来てくれる生徒がいなくて…
だから見てくれると嬉しいです」


ちょっと恥ずかしそうな、
でも嬉しそうな、

ちいさな笑顔。


すぐに真顔に戻っちゃったけど。



あ、今までなんとなく
関わらずにきたのが

もったいなかったかも、
って気になった。

接点ないから
しかたないんだけどさ。




水しぶきが七色に輝いた。


ヒオカ先生の横顔を見たら、
先生も虹見て地味に喜んでる。



ヒオカ先生は、
あたしの視線に
気づいて振り返ると、

思い出したように言った。


「そうだ、シイナさんは、い…」




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