ゴシップ・ガーデン
改めてお礼を言うのって
気恥ずかしいのに、


「俺は何もしてないよ」

ヒオカ先生は、
すぐに謙遜したから、

つい意地悪な気持ちになった。



「してくれたよ」

って、思わせぶりに
見つめてみせたら、


ヒオカ先生の
いつもは落ちつきはらった目の奥が
ザワザワと感情が揺れ動いた。



取り乱したり、
感情的になったりするのが
想像つかない人なんだけど、

その瞳に走った感情は、
動揺?緊張?期待?





「今日のサックスどうしたんだろう」

急にヒオカ先生は、
話と目線をそらして空にむけた。

「珍しいね」



…かわされちゃった。


嫌だったらもっとはっきり
断ってくれてもいいのに。


…そうしないのは、
ただ負い目があるから?



でも、あたしも
ちょっと気になってた。


今日はミスが目立つ。

メロディーが荒れてる。


つられて空を見上げた。


ときたま苛立ったように、
サックスが悲鳴をあげてる。


いつもは
流れるようなメロディーなのに。



あたしが聴き入ってると、
突然、ヒオカ先生の静かな声が、
音楽を遮った。


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