ゴシップ・ガーデン
ワンピースなんてろくに着たことないし、
メイクもアップヘアも
なんか慣れなくて落ちつかない。



けど落ちつかないのは
それだけが原因じゃないこともわかってる。




千早の家で一泊するから、
ちょっと多い荷物を持って外へ出る。


風が、膝丈のワンピの裾をゆらした。



アパートの前に
ヒオカ先生の車がとまってた。


なんか旅行みたいだな
って思ったら、

胸が高鳴った。






「…いつもと全然感じが違うね」


車に乗り込むと、

ヒオカ先生は
ちょっと驚いた顔して言った。



「…やっぱ変かな?」

慣れないかっこに
急に心配になる。



「いや、いいと思うよ」


ヒオカ先生は運転しながら
前を向いたまま
無表情な声で言ったかと思ったら、

恥ずかしそうに苦笑いして
つぶやいた。

「…褒めるの下手でゴメン」




耳が熱くなった。

本気で照れそうで、
焦ってお礼も言えなかった。


あたしも褒められ下手なんだから。


話題を変えようと
ヒオカ先生の服装を見る。



「…先生はいつもと
あんま変わんないね(笑)」


ヒオカ先生の格好は、
白いワイシャツと黒のズボン。

ネクタイとジャケットは
まだ着てない。


「そりゃ、ね(笑)」


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