ゴシップ・ガーデン
そのあと車中は静かだった。



前乗った時も思ったんだけど、
ヒオカ先生って車の運転上手い。


走り出し方とか
止まるときとか、
すごく静かでスムーズ。



当たり前なんだけど
車中二人きりで、

気まずいっていうか、
意識して無言になってしまう。



緊張した空気に
割って入るように
ケータイが鳴った。



「返事早…」


父からだ。


さっき、家出る前に
母に撮ってもらった
このワンピース姿を送ったんだ。



『シイナ可愛い!!
さすが俺の娘!!世界一!!!
よく似合ってるよ(#^▽^#)』



「…ちょっとおおげさ」

苦笑いしてしまった。




「縁切らなくて
よかったって思った?」



ヒオカ先生の質問に、
あたしはすんなり頭を縦にふった。

「うん」


父が喜んでくれたら、
あたしもうれしい。

これでよかったんだ。


もうすぐあたしは
父の世界一じゃなくなるけど、
それでいいと思った。


下手な嫉妬はもうやめよう。


あたしはあたし。


二番手三番手になったって、
あたしは変わらず
父を父だと思ってる。

それでいいんだよね。



ケータイ見ながら
はにかんだ。



ちらっと顔上げたら、
ミラーごしのヒオカ先生も
笑ってる。



ヒオカ先生…。


胸の奥がほのぼのと
あたたかくなった。



別にキスなんてしなくても、
こうやって一緒にいられるだけで、

あたしは特別だ…って思った。




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