ゴシップ・ガーデン
別れのメールを送ったのは
ちょうど夜で。



時間的に
友吾兄はバイト中だった。


多分ケータイは、
休憩室に置いてるはず…。


もしかしたら
まだメール見てないかも…。


そう思って
あたしは千夏姉のアパートから、
友吾兄のバイト先の
ガソリンスタンドに走った。



夏の夜。

全速力で。

汗だくになりながら。


蒸すように暑かった
記憶が残ってる。


で、バイト中の友吾兄から
強引にケータイ奪って
(運よくまだ
メールは読んでなかったから)、

千夏姉が送ったメールを削除して、

『別れよう』を
なかったことにした。




あとから
笑い話で聞かされたけど、

「友吾兄、ケータイ出して」って
詰め寄ったあたしは

髪は乱れてるし顔は鬼気迫って
ホラーばりに怖かったんだとか
(失礼な)。



シイナがここまでしてくれたんだから、
って千夏姉と友吾兄は
もう一度ちゃんと会って話し合って、


そんなこんなで
今に至るってわけ。




「それまではさ、

シイナって
年の割には冷めてるっていうか、
周りのことに興味なさそうな
印象だったんだけど、

ほんとは違うんだって
気づいたんだ。

いざという時の行動力がある。

ほんとは
すごく熱いモノ持った子
なんだろうな、って」


千夏姉は、
しみじみとあたしを見る。



「熱いモノ…?」


つぶやいたら、
千夏姉は真面目にうなずいた。


何だか
恥ずかしい気持ちになった。


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