異例な彼氏【短編】

そして、
私の目の前に
立ち止まる。


私と向かい合い、
じっと私を見つめる男。
その男を、
私は、初対面だというのに、黙ったまま見つめて、
不思議と癒されていた。


そんな私に、
男が呟く。

「これ、使えよ」

渋い声で言いながら、
男は、私に傘を差し出した。


私は、言う。


「もう、こんなにずぶ濡れなのよ………
有難う……でもいいわ………」

そして、愁いな瞳で、
男を見つめる。


男は、囁く様に
私に問い掛けた。

初対面だというのに

「あんた……哀しいことでもあったのか」

そして、私は思う

"なんて……いい声…"


男は、再び、黙って、
凛とした眼差しで
私を見つめた。


私は、呟く。

「慰めてよ…」


そう言って、

私は、男の首に両腕を回し、
男に口付けをした