異例な彼氏【短編】

出会い

意識が戻っていく…


目を開けた私は、
真っ白なベッドの中にいた。

顔を覗かせ、
窓辺の太陽に
目を背ける。

眩しい陽射しに目を細めながら、
私は、仰向けになり、
布団の中から顔だけを出して、目だけを動かして、辺りを見渡す。


「起きたか?」


聞き覚えのある渋い声に、仰向けのまま硬直していると、
男が、私の傍らに来た。

そして、
そっと真っ白なカップを置く。


甘いコーヒーの香り…
"カプチーノ?………
…好きだわ……"


私は、心の中で呟くと、
ベッドの上で仰向けのまま、
天井を見据えて
黙っていた。


男は、じっとつったって、私を見下ろしている。



長い沈黙の後、
男は、ゆっくりと、
私の頭元に腰を下ろした。

「何か…言う事は?」

私が、
シーツをぎゅっと掴んで、恐る恐る
男の方を見ると、
男は、思わず噴き出した。

「何だよ、あんた。
まるで、借りてきた猫みたいに。昨日とは偉い違いじゃん」

噴き出す男に、
私は天井を見据えて
黙ったままでいる。


そんな私を見下ろし、
男は、言葉を続けた。

「どっちが本当のあんた?昨日みたいな大胆なあんた?それとも、今みたいな人見知りで純情そうなあんた?」


男は、そう言うと、
カップを口に運んだ。

そして、
コーヒーを口に含むと、私へと顔を近付け、
自分の唇を、
私の唇に押し付けた。

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