【短】意地悪な恋慕



いつにもなく珍しく未博は男を感じさせる低い声であたしの名前を口にしたかと思うと。



その直後、未博の綺麗な顔が近付いてきて、唇に一瞬だけ触れた温かくて柔らかい感触。



離れていく未博を涙で潤む瞳に映しながらぐちゃぐちゃにこんがらがる頭の中を必死に整理しようとすれば、途端にギュッと未博の甘い匂いと温もりに身を包まれた。



「…怜莉。好きだ。」

『みひ、ろ…?』

「ガキん頃からずっと。怜莉だけが好きだったよ。」



……ダメだ。



いくら乱れた頭の中を整理しようとしても、未博の言葉が理解出来ないから整理しようにもさらに乱れて訳が分からなくなる。



好きって何?



だって未博、今は麻耶ちゃんのことが好きで、さっき告られてむちゃくちゃ嬉しそうに笑ってたじゃん。



ずっと未博に言われたかったその言葉だけど、好きな子がいて告白までされている未博に言われても嬉しくなくて。



嬉しいよりもムカつく気持ちの方が強く、涙がさらに瞳から溢れて零れ落ちた。



『…っ麻耶ちゃん好きなくせに…っそんなこと言われたくない…!!』


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