【短】意地悪な恋慕



抱き締められる未博の腕の中。あたしは力一杯に未博の胸を両手で押して未博の腕から逃れようとする。



だけど、未博はあたしがこの行動を取ることを分かっていたかのように抱き締める腕に力を入れて強くあたしを抱き締めそれを阻止する。



と。



未博から逃れられなくて離してと抵抗するあたしに「怜莉、聞いて?」いつものあたしが好きな声色でぽんぽんと頭の上で軽く手を弾ませ未博は続けた。



「麻耶ちゃんのこと、別に好きじゃないよ?告られたけど全然嬉しくないし。」

『…嘘、だもん…。』

「ほんとだって。怜莉に告られたらすっげ嬉しいけどね?」

『……嘘。』

「怜莉ぇ〜…。どしたら信じてくれる?」



信じるもなにも、数分前まで未博は好きじゃないと言った麻耶ちゃんに告られ喜んでいて、前からも麻耶ちゃんのことであたしは相談されていたのだ。



好きな子が出来て告って付き合っては別れをずっとあたしの前で繰り返してきた奴の言葉をどう信じればいいの?



いくら未博だったとしてもそう簡単に信じられるものじゃない。



『未博…、ずっと好きな子いたじゃん。』


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