Sweet Life【Sweet Dentist短・中編集】
チョコレートを口にしたとき、心に広がった温かなものは、今までに感じたことの無い感覚だった。

舌に蕩けるカカオの香りと深い味わいが、彼女がどんなに俺を愛しているかを心に直接語りかけてきた。

俺への確かな愛情がその中に凝縮されていて、肌が粟立つほどの感動に包まれた。

それと同時に、人の心を揺り動かすお菓子を作る千茉莉には、やはり天性の才能がある事をハッキリと確信した。

カリスマパティシェと言うにはまだまだ修業の身でヒヨッコだが、その才能は明らかで、すでに将来を期待されている。

それは俺にとっても誇らしいことだが、だからこそ、いつかその夢の翼を広げて、俺の腕の中から飛び立ってしまうのではないかという不安は結婚しても消えることはなかった。



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