Sweet Life【Sweet Dentist短・中編集】
「千茉莉、何やってんだ?一人で行くな。ヘンなのに声かけられるぞ。」

俺の声にホッとした顔で振り返り胸に飛び込んでくる千茉莉を引き寄せて男を睨みつけた。
かつて視線で相手をねじ伏せた絶対的オーラを含んだ冷たいグレーの瞳で。

「…なんだよ、てめぇ。邪魔すんな。」

「邪魔?モテない奴の言う台詞だな。人の女に手ぇだしてんじゃねぇよ。」

「なにぃっ!てめぇバカにしやがって。」

「バカにしてる?違うね。それ以前に、どう見ても既にバカなんだから、それを今更確認するような事はしねぇよ。」

ビリリと嫌な空気が流れる。

相手も腕に自信があるのか、このまま引き下がる気はなさそうだ。
人目のあるこの場所での乱闘は避けたいと思ったが、この雰囲気では回避するのは難しいかもしれない。

千茉莉を巻き込むのは嫌だが、彼女を一人にするもの不安だ。

……どうするかな。


「あ~、そいつかなり凶暴だから早く逃げたほうがいいぞ。可愛い奥さんにベタ惚れで、ちょっとでも触ろうものなら顔の原型がなくなるまで殴られるぞ。」


俺の思考を断ち切るように背後から聞こえた聞き覚えのある声。


……この声…マジかよ?


先ほどの嫌な予感が再び胸を過ぎった。



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