Sweet Life【Sweet Dentist短・中編集】
聞き覚えのある声に唖然として振り返ると、ニヤニヤ笑っている龍也さんがそこにいた。
少し離れたところに聖良さんが子ども達を連れて苦笑しながら見守っている。

この緊迫した空気の中、聖良さんはどうしてそんなに平然としていられるんでしょうか?

「…なんだよ。その凶暴って。失礼だな。喧嘩に負けた事が無いっていうだけの話だろう?」

響さんが龍也さんに向かって苦虫を噛み潰したような顔をした。

「喧嘩に負けた事の無いだけの奴に暴力団からスカウトが来るのか?」

暴力団からスカウト…。
そう言えばそんな話も聞いたことがあるかもしれない。

「……いや、それはあいつらに気に入られちまったって言うだけで…。俺が望んだ事じゃねぇし。」

「まあ、千茉莉ちゃんなら聖良たちと一緒にいれば安全だから暴れてきてもいいぜ。助けは要らないと思うけど、俺も行こうか?」

「…いらねぇ。千茉莉の事頼むわ。」

「あ、絶対に殺すなよ。俺のホテルで事件ってのは困るからな。事故くらいで済ませてくれよ。救急車呼んでおいてやるから。」

「クス…用意がいいな。」

「まあな、響がキレルのは久しぶりだからな。楽しみだ。」

「楽しむなよ。見せもんじゃあるまいし。」

龍也さんと響さんの怪しい会話を聞いていた二人の顔色がどんどん青ざめていくのがわかって面白い。
さっきまでの威勢のよさは何処へやら、今は視線をきょろきょろと彷徨わせている。

きっとどうやって逃げ出そうか考えているんだろうなぁ。

…あぁ、そうか。だから聖良さんは余裕で笑っていたんだ。『どうしようもない人たちね』って感じの顔で。

しょうがないなぁ。まったく。

喧嘩が強くて、頭が良くて、とてもカッコイイあたしの旦那様は、凄くヤキモチ妬きで、心配性で、ちょっと喧嘩っ早くて、どうしようもなく意地悪なんだから。

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