Sweet Life【Sweet Dentist短・中編集】
――――30分後。

あたしはまだ夢の中にいた…。

心の動揺を物語るように、少々焦げてしまったパンケーキを目の前に、凹むあたし。
未来のカリスマパティシェとしては、いくら動揺していようと焦がしてしまったのは凄く不本意で、やっぱり夢であって欲しいと願うばかりなんだけど、現実は厳しかった。

テーブルの向こう側でニコニコと甘いコーヒーと、メープルシロップたっぷりのパンケーキに舌鼓を打つ幸せそうな響さん。
凹んでいるあたしに「千茉莉は天才だ!すっごく美味しいよ!!」と、感嘆符をつけまくって感動している。

小さな子供みたいにはしゃぐ彼を見つめながら、あたしは必死に考えていた。

本当にどうしたんだろう?

甘いものが大嫌いで、今まであたしが作ったお菓子だって満足に口にしたことが無い響さんが、こんなに幸せな笑顔で甘いものを食べるなんて…
そりゃ、いつかはあたしの作ったお菓子を食べさせたいと思っていたし、こんなに美味しそうに食べてくれるのは嬉しい筈なんだけど…。

何て言うか…複雑だわ…。

まさか、昨日何か悪いものでも食べたんじゃないでしょうね?


それとも、頭でも打って、昨日までの自分を忘れてしまったとか?


でも、あたしのことは覚えているのよね?


ん~~~?やっぱりわかんない。



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