Sweet Life【Sweet Dentist短・中編集】
抱き締める腕から何とか逃げ出して、とりあえず病院へ連れて行こうとするけれど、そんなあたしの行動を、むしろ面白がって益々腕の中に閉じ込めてくる響さんは、もはやテンションがイッてしまっている。

響さんしっかりしてよー!

言葉遣いも雰囲気もいつもの響さんよりずっと紳士なのに、自分に都合よく俺様なところはぜんぜん変わらないじゃない。
…ってか、むしろ酷いかもしれない。

ああもう。いっそ、殴って気を失ってもらってからお医者様を呼ぼうかしら?

「に・げ・な・い。そんなに逃げたいなら逃げてもイイよ?俺すぐに追いつけるし。」

ピク…

逃げる?それって良い手かもしれない。

「ホント?じゃあ逃げるからあたしを捕まえてみて?」

かわいらしく「ねっ?」と小首を傾げておねだり目線。
自分から挑発して失敗したときのリスクはあるけれど、彼がこの仕草に弱いのをあたしは知っている。
祈るような気持ちで様子を伺っていると、軽く肩をすくめて「いいよ、逃げてみてごらん?」とすぐに乗ってきてくれた。


チャーンス♪


あたしは逃げるふりをして、寝室へと響さんを誘い込んだ。

追い詰められたふりをして、ベッドに倒れこんでみせると、案の定響さんは嬉しそうだ。



< 38 / 130 >

この作品をシェア

pagetop