Sweet Life【Sweet Dentist短・中編集】
「っ…ってぇ~っ!何すんだよいきなりっ!」

「バカ!どれだけ心配したと思ってんのよ?すっごい熱で丸一日眠ってたのよ!あたしがどんな気持ちで看病していたと思っているのよ!それなのにっ…誰が何ですって?」

「熱?俺が?」

「そうよ。40度もあって、かなり壊れてたんだから。まったく覚えていないの?」


………寝相が悪くてベッドから落ちたんじゃなくて、俺の看病をしてそのまま眠り込んでしまったのか?

そう言われてもなぁ…熱があったときのことなんて何も覚えちゃいねぇぞ?

俺が自らコーヒーに砂糖を入れて飲んだとか、シロップをドボドボかけてパンケーキを食ったとか、信じられない奇行を身振り手振りで話してくれるが、まったく記憶の断片にも無い。


俺がコーヒーに砂糖を3つも入れただぁ?

千茉莉のタルトを食っちまっただぁ?

自分からパンケーキを作れと頼んだって…ありえねぇって。


だが、一日分の記憶が無いのは事実だ。


マジかよ…?


俺は物心ついてから、病気らしい病気をしたことが無い。

虫歯一本も無い完璧な健康体って言うのが俺の自慢で、風邪で高熱を出した事なんてハッキリ言ってない。

だから、逆に言うと熱があるときに俺がどうなるかなんて、今まで誰も知らなかった。



そう、俺自身でさえも…。




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