Sweet Life【Sweet Dentist短・中編集】
「先輩に誕生日のプレゼントを渡したかったの。」

「え?プレゼントって…亜希俺の誕生日…。」

「知っていましたよ。ふふっ。あたしね、本当は先輩のことずっと好きだったんです。」



―――――― え?



「あたし、留学が決まっていたから、このまま気持ちを告げずに留学するつもりでした。」


亜希が…俺を好き?



「だって、好きって言ったら、先輩の傍にいたくなってしまうから…。だから、気持ちは告げずに行くつもりだったんです。それなのに、響先輩は軽いノリで付き合おうって言ってくるし、ホント罪作りですよ。」

亜希が瞳に溢れ出す涙を必死に流すまいと、意地を張っているのがわかる。

「これ、プレゼントです。受け取ってもらえますか?」

小さな箱を受け取って中身を見てみると、黒い石のピアスが入っていた。

「俺に・・・?」

「はい、先輩ピアスホールありましたよね。オニキスは邪念や邪気を振り払う、護符の石です。先輩を護ってくれるように…お守りです。」

「亜希…なんで?」

「からかわれていると思っていたんです。でも、今日は先輩が本当にあたしを好きになってくれていたんだって心から思えて…うれしかった。
先輩は真っ直ぐに気持ちを伝えてくれたのに、あたしがこのまま黙って留学するのは先輩にウソをつくみたいでいやだと思いました。」

12月の冷たい風が吹き抜けて亜希の髪を煽るように乱す。
亜希が俺の瞳を真っ直ぐにとらえ、涙を堪えて微笑んだ。

「だから、最後に告白していきます。ずっと好きでした響先輩。あたしを好きになってくれてありがとうございました。」


< 61 / 130 >

この作品をシェア

pagetop