Sweet Life【Sweet Dentist短・中編集】
どの位その場に立ち尽くしていただろう。

気が付いたら、俺の前に5~6才の小さな女の子が立っていた。

「お兄ちゃん、どこか痛いの?」

「……え?」

「泣いてるから…どこか痛いのかなって。」

言われてみて始めて気が付いた。俺の頬を、温かいものが流れていた事に。
グイッと制服の袖で涙を拭うと、女の子に微笑んでみせる。

「うん。少しだけ心が痛かったんだ。でも、もう大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。」

女の子はホッとしたように笑って小さなキャンディを数個俺に向かって差し出した。

「あのね、悲しいときや、寂しい時は、甘いもの食べると少しだけ元気になれるのよ。お兄ちゃんも元気になってね?これ、あげるから。」

驚きながらも両手を差し出してキャンディを受け取る。

僅かに触れた小さな手から心が温かくなるようないたわりの気持ちが流れ込んでくる。

「本当は、パパの作ったケーキを食べるともっと元気になるんだけどね。
あたしは今これしか持っていないから…。ちょっとしか元気をあげられなくてごめんね、おにいちゃん。」

少女の優しい心に苦い想いが溶けていくようだった。

優しく少女に微笑みかける。

「ありがとう。少し元気になったよ。君のおかげだね。」



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