Sweet Life【Sweet Dentist短・中編集】
亜希のくれたプレゼントを思い出し、オニキスのピアスをつけてみる。

  【オニキスは邪念や邪気を振り払う、護符の石です。先輩を護ってくれるように…お守りです】


  【大切な恋を諦めても選んだ夢です。きっとかなえて見せますから…】


  【さようなら。先輩…】


亜希の声が胸に蘇ってくる。

「亜希。おまえが頑張っているなら俺だって負けないさ。みてろよ。おまえがピアニストになる頃にはビックリするくらいいい男になっていてやるからな。」

そう言って亜希の走り去った方角を見つめる。

亜希…好きだったよ。




冬の太陽はいつの間にか西の空を僅かに染める夕日の残像だけを残し、その存在を隠そうとしていた。

さよならってお前は言ったけど、俺はさよならなんて言わないぞ。

空は夕日がその色を失い星が本来のきらめきを取り戻そうとしている。

冬の澄んだ冷たい空気の中で、凍りつくように輝く星はダイヤモンドのように綺麗だった。


またな…亜希…。


俺は亜希の去った道とは反対の方向へと歩き出す。


もう、振り返る事は考えていなかった。



++ Sweet Memories Fin ++

響の初恋物語でした。
蜂蜜色の風景の中運命の出逢いをした二人
この10年後、二人は再び運命に引き寄せられ再会をします。
その後の二人はご存知の通り…(笑)




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