Sweet Life【Sweet Dentist短・中編集】
「千茉莉はちゃんと食ってきたのか?まだなら、何か軽く作ってやろうか?」

ああ、こういう優しさが大好き。

「…ううん、いらない。試食のしすぎでご飯食べれない」

「大丈夫かよ?」

心配そうにグレーの瞳を細める仕草も、クシャ…と、髪をかき回すように撫でてくれる優しい手も、全部大好き。

「ん…明日はバレンタインだし、とりあえずこんなに遅いのは今日でおしまいだから…。明日はちゃんと食べる」

試食のしすぎというよりも、むしろ明日のバレンタインを前に凄く緊張しているんだけどね。

告白をするお客さんの気持ちを、ちゃんと届けられるだけのチョコレートが出来ただろうか…?

そう思うとドキドキして、まるで明日が合格発表の受験生みたいな心境よ。

だから、今日は尚更、お菓子作りに没頭して考えないようにしていた。

「無理するなよ?ぶっ倒れたら明日も何も無いんだから。今日は特に遅かったんだし、もう風呂に入って寝ろよ」

「うん…もう、お風呂もダメ。ねむい…」

「こら、ソファーで寝るな。とりあえず着替えて寝室まで行けよ」

促されて、フラフラと寝室へ行くと、パジャマに着替えてそのままベッドに飛び込んだ。

そんなあたしを見て、「ガキみてぇ」と苦笑する響さん。

しょうがないじゃない。今日は凄く緊張しているし、疲れたんだもん。




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