Sweet Life【Sweet Dentist短・中編集】
今夜の帰りがいつもより遅かったのも、こんなにも緊張して疲れたのにも、実は特別な理由がある。


明日のバレンタインに、響さんに渡すスペシャルチョコレートを作っていたからだ。

いつだって、あたしを応援して、優しく見守ってくれる響さん。

あなたがいてくれるから、あたしは頑張れるの。

あなたが愛してくれるから、あたしはお菓子に愛を注げるの。

だからね、今年はあなたに感謝と、ありったけの愛情を詰め込んだスペシャルチョコレートをどうしても食べてもらいたい。

バーボンの好きな響さんのために、お酒にも合うようにと作ったチョコレートは、ほのかな苦味と舌に残らない微妙な甘さが絶妙の一品となった。

ありったけの心を込めて作った今夜のチョコレートは、今までで最高のものが出来たと自負している。

あたしの全てを注ぎ込みすぎて、出来上がったときには疲労困憊《ひろうこんぱい》。

よく自力で帰ってきたと、自分を褒めてあげたいくらいよ。

これで食べてもらえなかったら、あたし泣いちゃうだろうなあ。

ねぇ…響さん。ちゃんとあたしの気持ちを受け止めてね?

あたしの愛情がいっぱいに詰まった、“媚薬入り千茉莉スペシャルチョコ”(命名パパ)

これを一口食べたら、きっと伝わるんだから。

あたしがどんなに、あなたに感謝しているか…

あたしにとって、あなたがどれだけ大きな存在か…

あたしがどれほど深く、あなたを愛しているか…


もしも、甘いものは嫌いだからって食べてくれなかったらどうしよう?

とりあえず泣き脅しでもしてみようかな?

それでも断固として食べてくれなかったりしたら…

睡眠薬でも飲ませて、無理矢理口に入れちゃうからね?


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