光輪学院シリーズ・依琉の微笑
依琉も金持ちだが、雛も負けてはいない。

おかげで今のオカルト研究部は例年にないぐらい裕福だ。

それでも気苦労しそうなウンザリ顔の神無月と九曜、そして楽しそうにはしゃぐ榊や雛の顔を思い浮かべると、依琉の顔には自然と笑みが浮かんだ。

―だがその笑みも、翌日、従兄の姿を見ると固まった。

チャラ男から、真面目な男性へと変貌していたのだ。

一瞬別人かとも思ったが、どうやら本人らしい。

しっかりとスーツを着込み、茶髪も黒く染め、セットしてきた。

ピアスや指輪などアクセサリー品は一切付けず、メガネしかかけてこなかった。

そのメガネもいつもなら、コンタクトレンズを装着していたはずなのだが…。

両親を脇にはさみ、従兄は深々と祖父と依琉に頭を下げた。

これまでの悪行を詫び、今後は心を入れ直すので婚約することを許して欲しいと、真剣な表情で言った。

とりあえず従兄を別室に行かせ、両親と祖父と依琉はリビングに残った。

どういうことかと祖父が驚いた表情で尋ねると、ご両親も戸惑いを隠せない表情で言った。

例の女性と出会ったのは二ヶ月ほど前―。

大学で出会ったらしい。

すると従兄はどんどん女性にのめり込んでいった。

女性は従兄が言うには真面目で温厚、そして優しい人らしい。

容姿も目立ってはいないが、そこそこ美人らしい。

今まで従兄が付き合ってきたのは派手な女性ばかりで、全く正反対の女性には興味も示さなかった。

しかし従兄は本気になり、そして真面目になった。

おかげで成績も上がり、悪い連中とはスッパリ縁を切った。

素行も驚くほどよくなり、今では親孝行もしてくれる。

両親も最初はその変化に驚いたものの、息子が本気で女性を好きになったのが嬉しいらしい。

なので賛成してほしいと、祖父と依琉に頭を下げた。
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