光輪学院シリーズ・依琉の微笑
祖父はとりあえずその彼女に会ってから、と言い、三人を帰した。

「彼の変貌ぶりには驚きましたね…。恋の魔力と言ったところでしょうか?」

依琉も驚くぐらい、変わっていた。

前までは依琉の顔を見るたび舌打ちをしていたが、今では笑顔で挨拶をしてくるほどだった。

「うむ…。依琉、ちょっと調べてくれんか?」

「探偵料は高いですよ?」

「今年の旅行はお前の希望の所にしよう」

「ではパリでお願いします。パリで美味しいと評判のお菓子、神無月と雛が食べたいと言っていましたので」

そう言いつつ、依琉は動き出した。

依琉は独自に調査員を持っていた。

それは千里眼を持つゆえ、時々依頼が来るので、仕事としてこなす為だった。

調査員に従兄の彼女について調べるよう言い渡し、三日後に結果報告が届いた。

その日、依琉は朝から出かけていた。

従兄の住む街へ。

近代的なビルが建ち並ぶ中、森林公園があった。

そこの奥には古くからの沼があり、従兄と彼女はそこでデートをしていた。

調査団の報告では、二人はよくここで会っているらしい。

公園の奥深くの為、人は滅多にここに来ない。

それどころか昔は沼で溺れ死ぬ者が多かった為、暗黙の立ち入り禁止区域になっているのだ。

しかし二人は楽しそうに、嬉しそうに草むらに座り、話をしている。

一見爽やかそうなカップルに見えるも、依琉の眼には別に<視>える。

「なるほど、ね」

小さく呟く。

森林部分の大きな木の影に隠れ、密かに二人を見ていた依琉は、二人の前に出た。

「こんにちは。そしてはじめまして」

二人は驚いた顔をしたものの、すぐに従兄が反応した。

笑顔で彼女に依琉のことを紹介する。
< 6 / 9 >

この作品をシェア

pagetop