光輪学院シリーズ・依琉の微笑
依琉はあの日、楽しそうに語り合う二人から<視>たのだ。真実を。

彼女の生前の姿は、従兄が好みそうないわゆるギャル系の女性だった。

しかし外見は派手だったものの、心は純粋だった。

大学で軽い気持ちで声をかけてきた従兄に、本気になってしまったのだ。

ところが従兄は彼女の体だけが目的だった。

夜、あの沼に従兄は彼女を呼び出し、そして暴行した。

傷付いた彼女を置き去りにして去った後、目覚めた彼女は沼に飛び込み、命を落とした。

どうやらあの沼に、従兄は暴行目的で行っていたらしい。

深く傷付いた女性の姿が、たくさん見えた。

そして強い怨念が残った思いが、沼に溜まってしまった。

その為、彼女は死者ながらも、この世によみがえったのだ。

自分の黄泉への道に、従兄を引きずり込む為に。

姿・形を変え、従兄に近付いたのだ。

「彼も彼女も本望でしょう。死への旅路に、二人仲良く連れ立って行ったんですから」

「…もうあやつを連れ戻すことはできないのか?」

「ムリでしょう。ボクの眼から<視>ても、二人は普通の人間が行けない場所へ行ってしまったんですから」

二人は仲良く、笑顔で黄泉の道へ歩いて行った。

追いかけることは不可能。

連れ戻すことはできない。

「やれやれ…。あやつの両親に何と言えばいいのか」

「ありのままを言っても信じてはくれないでしょうからね。普通に駆け落ちというネタで収めるのが一番じゃないでしょうか?」

「はぁ~。そうだな」

祖父は頭をかきながら、近くにいた秘書に耳打ちをする。

依琉は笑顔で紅茶を飲んでいる。

祖父の表情は険しいままだ。

「しかし依琉よ、彼女が死者であること、何故言わなかった?」
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