"code = choice"

 帰宅した時に点けたダイニングの灯りが廊下に漏れてはいるものの、まったく人の気配は無い。
 父の帰宅時間は、いつも午前になってからだ。たまに、朝少し顔を合わせるだけで、言葉を交わすこともない。

 関東電力システム管理部長。今の仕事は、電線を利用した光高速通信の設置と低消費電力無線通信施術の開発らしい。これは本人が言ったわけではなく、僕が関東電力のホームページから得た情報だ。

 あの日から、加速度的に家族はバラバラに崩壊した。いくら後悔しても、あの日々が僕に戻ることはない。僕はもう二度と、大切な物を失いたくない。そのためには、僕は沈黙を続けている。これまでも、これからもずっと。


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