"code = choice"
モモエに到着すると、直ぐにカウンターを覗き込む。オーナーはまだ来ていない。次に僕の視線は、Zさんの指定席へと向かう。
まだ8時前にも関わらず、いつも通りに、その席にZさんの姿があった。
「Zさん!!」
僕は名前を叫び、その場所に向かって狭い店内を走る。汗にまみれ、息を切らして側に立つ僕を、Zさんは不機嫌そうに見上げた。
「何?」
「あ、あのプログラムって、パスワードを無効化するなんてことはないですよね。実は、盗んだブログのパスワードが、オープンになってるんです!!」
Zさんは再びパソコン画面に向かうと、キーボードを叩きながら言い切った。
「無関係。私はそんなプログラムを作ってない」
作ってない?
という事は、あれはZさんが作ったプログラム?
「別の誰かが、違う目的でハッキングした―――ということだろうね」
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