"code = choice"

 一通り阿部先生の話を聞いた瀬戸 麻美は、苦虫を噛み潰したような表情で腕を組んでいる。
 おそらく、完全には信じてはいないらしい。とは言え、僕の仕業にするわけにもいかず、怒りの矛先をどこに向ければ良いのか分からない―――といった感じだろう。

 僕は恐る恐る、瀬戸 麻美に声を掛ける。
「これで、僕が犯人ではないと分かったでしょう。もう、お引き取り願えませんか?」
 ファンとしては、いつまでもいて欲しいが、この緊張感が続くと身がもたない。

 その時、古典準備室の電話が不意に鳴った。
 阿部先生は本棚の向こう側にあるデスクに向かい、何者かと会話した後、「分かりました」と返事をして受話器を置いた。

「みなさん、今から私は校長先生の指示で、出張しなければならなくなりました。よろしければ、みなさんも私と一緒に行きますか?」

 先生の出張に、僕たちが同行?


.
< 52 / 108 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop