"code = choice"
一通り阿部先生の話を聞いた瀬戸 麻美は、苦虫を噛み潰したような表情で腕を組んでいる。
おそらく、完全には信じてはいないらしい。とは言え、僕の仕業にするわけにもいかず、怒りの矛先をどこに向ければ良いのか分からない―――といった感じだろう。
僕は恐る恐る、瀬戸 麻美に声を掛ける。
「これで、僕が犯人ではないと分かったでしょう。もう、お引き取り願えませんか?」
ファンとしては、いつまでもいて欲しいが、この緊張感が続くと身がもたない。
その時、古典準備室の電話が不意に鳴った。
阿部先生は本棚の向こう側にあるデスクに向かい、何者かと会話した後、「分かりました」と返事をして受話器を置いた。
「みなさん、今から私は校長先生の指示で、出張しなければならなくなりました。よろしければ、みなさんも私と一緒に行きますか?」
先生の出張に、僕たちが同行?
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