"code = choice"
そして、予想通りの言葉が、その口から放たれる。
「申し訳ございません。トラブルが発生し、大変な事態となりました」
「何が起きたのですか?」
焦る阿部先生の表情が更に曇り、いつもの能天気な話し方とは違って、少し厳しい口調で聞き返す。
「そのことについては、私からご説明致しましょう」
開け放しだった扉から、もう1人スーツ姿の男性が入って来る。その男性を見るなり、僕は思わず呟いた。
「父さん・・・」
それはそうだ。
この緊急事態に、その部署の最高責任者が現場に来ないはずがない。
父は僕を一瞥すると、顔色一つ変えず話し始める。
「実は、新ネットワークシステムの基軸部分に重大な不具合が発見され、完成までの時間が5時間延長になりました。
本当に、申し訳ございません」
「ご、5時間・・・ですか」
現状でさえ既に限界なのに、あと5時間だなんて到底不可能だ。
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