"code = choice"
僕はいったいどうしたい?
例え、自分に何もすることができなくても、あの場所を離れることがイヤだった。
どんなに自分の非力さを痛感しても、最後の最後まで、あの場所にいたかったんだ。
でも―――
「たぶん、浩平君のお父さんは、キミが最後まであの場所に居て、挫折感を味わったり、責任を背負って生きていくことを恐れたんだよ」
「まさか、あの金だけ渡して、僕に無関心な父が・・・」
オーナーは僕の顔を見て、首を大きく横に振る。そして、思いがけないことを口にする。
「浩平君が遅くまでこの店に居ても、一度も注意したことはなかったよね?
それは、お父さんが来て、君のことをよろしくお願いします、と、頭を下げたからなんだよ」
あの父が?
「それに、こうも言っていたよ。
―――浩平は、自分のイタズラが原因で妻が死んだと思い込んでいます。
ですが、妻は進行が速い末期の肺ガンだったのです。私の話しに耳を貸さない浩平には、伝える術もありません。ですから、心が少しでも安らぐなら、ここで遊ばせてやって下さい――-とね」
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