"code = choice"

 空メールを送信すると、ほんの数秒で返信があった。その返信メッセージには、4桁の数字―――
 どういうプログラムなのか、当然のように僕に分かるはずがない。Zさんの入手経路も定かではない。でも、そんなことはどうでも良い。

 シークレット記事をクリックすると、「パスワードを入力して下さい」と表示され、僕は入手した4桁のパスワードを入力する。
 次の瞬間、「やった」と小さくガッツポーズする。
 閲覧できるようになったシークレット記事を、僕は食い入るように読む。

 こんな盗み見など、端から見れば悪趣味で、無意味なことに思えるだろう。だけど、僕にとってこれほど胸踊る出来事は久し振りなのだ。

 僕は母が誰よりも好きだった。母の喜ぶ顔が見たくて、遊ぶ事も我慢して勉強した。そして、県内トップである私立若宮小学校にも合格した。
 母の喜ぶ顔が僕の全てだった。それが僕の喜びだった。


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