【完】あたしとお兄ちゃん〜秘密の関係!?〜
眉を上げて大袈裟に驚くお兄ちゃん。その意地悪な言い方にぐっと言葉が詰まる。
「襲われたっていうか、あれは――付き合ってた時だし……」
言葉の足らないあたしの説明に、お兄ちゃんの顔色が微妙に変化したことには気づかなかった。
「ふーん、庇うんだ。無理矢理じゃあなかったの? 強引にキスされて、悦んだ? 気持ちよかった? またされたかった訳?」
目の前のお兄ちゃんが言いながら徐々に近付いてくる。その勢いに圧されてどんどん小さくなる声。
「ち、違うよ。ひどい。そんな言い方。そうじゃなくて……だから。あたしたちはもう無理なの」
こんなしどろもどろな答えに、お兄ちゃんが納得するとは思えなかったけど。うまく言えない自分がもどかしい。
だって長谷川くんは知ってるから。あたしの心はもう彼に無いって。
「……アイツは、無理だとは思ってないんじゃない?」
「え?」
確かに。
さっきの長谷川くんはすごく真剣な目をしてたけど。
まさか――。
彼には、酷いことをした。怒って嫌われてもおかしくないのに。
見えない心がチリチリ痛む。
「チィ。お前はいつでも無防備過ぎなんだよ」
苛立たしい声。
伸びてきた腕が
あたしの体を拐った。