【完】あたしとお兄ちゃん〜秘密の関係!?〜

 離れていく体。心臓がざわついて火照った体が急速に冷えていく。隣のお兄ちゃんが遠かった。

 また、家族の距離。
 
「……俺、これから大学に戻るから。今夜は向こうに泊まるよ。戸締まりよろしく」

 突然そう言うともう立ち上がって玄関に向かっていた。

「――え? 今から?」

 その背中慌てて声をかける。

「あぁ。今日中に仕上げないといけないレポートがあったの、思い出した」

 顔だけこっちに向けた。その他人行儀な王子スマイル。

 嘘かもしれない。
 本当かもしれない。

 行かないで。って言いたい。けど。お兄ちゃんから見えない壁を感じて口にできなかった。

 何も聞けない。
 何も言えない。
 踏み込めない透明の壁。
  
「明日、また来るから――」

 ガチャリ。あたしを拒絶するように扉が閉まる音が玄関に響いた。


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