【完】あたしとお兄ちゃん〜秘密の関係!?〜

 静かな住宅街に低く響きわたる。冷たいようでいて、温かい声。長い睫毛に縁取られた瞳に射竦められる。

「……ごめん」

 感情にまかせて突き進むあたしは周りの気持ちを考える余裕がなくて、結局、お兄ちゃんや両親にも余計な心配や迷惑をかけてる。
 俯いて、自覚する。原因は目の前の人にあるとしても。
  
 耳元をかすめる深い吐息。気がつけばあたたかい腕に包まれていた。

「――とにかく。無事でよかった……」

 平気であたしや家族を置いて一人で遠くへ行っちゃうくせに。この人の腕の中はいつでも温かい。だからすぐに安心してしまうんだ。


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