【完】あたしとお兄ちゃん〜秘密の関係!?〜
「さ、早く帰ろ。八重子さんと毅叔父さんが待ってる」
他人行儀な家族の距離。このまま遠くへ行ってしまうんだ。歩き出すお兄ちゃんの背中を見ながらそう実感する。
堪らない――耐えられない。
じゃあ、じゃあ何で?
「そうやってすぐにお兄ちゃん面しないで! じゃあ、何で……何であんなキスしたの!?」
感情の勢いに任せて言い放った。目頭が熱い鼻先がツーンと痛くなる。震える声。また涙で視界が滲む。
あたしは、あたしは――!
言わなくちゃ。ちゃんと気持ちを伝えなくちゃ。焦れば焦るほど言葉が出ない。鼻水を啜る音だけが秋の夜空に吸い込まれていく。