【完】あたしとお兄ちゃん〜秘密の関係!?〜
だから幻かと思った。
力が抜けて、家の目の前でペダルから足を降ろす。
玄関の門に背中を預けて長い片方の足をもて余したように伸ばしてる。さらさらと髪が冷たい風に揺れて。細められた瞳でこっちを見てた。
それは間違いなく。
「お、にぃ……ちゃん?」
足元にはボストンバックが一つ。
「おかえり」
薄い微笑み。
耳に届いたいつもの柔らかいあの、声。
「た、だいま……」
声が震える。
なんで!?
どうして!?
言いたいことは沢山あるのに、言葉にならない。心の準備が無かった分驚きと動揺で視界が滲む。