亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
…ただ分かるのは、それが暖かいということ。
いや、むしろ熱いくらいの…身を焦がす何か。
彼女が泣き止んでくれるなら、私は構わない。
私は、何も望んでいない。
彼女のためと思っていることが本当に正しいのかは、分からない。
だが、彼女が……アシュが求めるなら、出来るだけ私は、私の出来る限り、叶えてあげたいと思う。
そうだ。
だからきっと………この切ない胸の痛みも、熱も、人間という器が本能から欲する甘美な快楽も。
全て、ただの憐れみに違いない。
今だけ。私は、彼女の望むもの…望みを叶えるものになろう。
それで、彼女のためになるなら。
私は。
………これが憐れみでないのならば、一体何なのだろうか。
分からない。
…彼女が、私の名を呼ぶ。
快楽に浸った瞳で、私を映す。
この熱は、何なのだ。
…分からない。
分からないが…。
酷く、愛おしい。
夢でも、見ているのだろうか。
何もかも曖昧で、朧げで、吹雪に掻き消されていく。
そんな中でも、ザイはアシュから目を離すことはない。
ただただ、時は過ぎていく。
夜は、朝日の訪れを待つ。