亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
他人と関わるのが好きではないのなら無視してもよいのに…変に律儀なザイはゆっくりと振り返った。
無感情な瞳が人懐っこい笑顔を向けて肩を小突いてくるアオイを捉え、数秒間の沈黙を置いた後………ザイは同じ調子で顔を背け…ようとしたが、笑顔のアオイに「何だよその、ああなんだこいつか、みたいな反応は…」と悲しげな声で制止された。
「……お前、何してるんだ?探しても探しても見つからないって諦めてたのによ。…まさかこんなあっさり発見とは…」
俺の苦労は一体何だったのだ…と、独りオーバーリアクションで項垂れるアオイに、謝る必要など毛頭無いのだが、後が面倒なのでザイはとりあえず詫びの一言をボソリと漏らした。
「…まぁ、いいけどよ。何を見ているんだ?…依頼関連なら最近はいいのが無いぜ。金にはなるがな」
「…その、ようだな。……………………例の賊…出て来たのか…」
「…あ?………ああ、そうらしいな…」
伝え木に張り出された情報の一部をじっと凝視するザイに、アオイは怪訝な表情を浮かべる。
もしや護衛の依頼に興味があるのだろうか、と思った直後…突然ザイは伝え木から顔を背け、踵を返した。
そしてそのままアオイに背を向け、無言でツカツカと人混みに紛れていく。
「………おいっ…!」
遠ざかっていくその無感情の背中にアオイは叫んだが、今度は振り返ってはくれなかった。
…街の外に通じる門へと向かうザイ。
遠目でも目に付く後ろ姿を、アオイは呆然と見送るしかない。
「………………読めねぇ奴…」
何を考えているのか分からない。故に、面白い。
後頭部を掻きながら、独り溜め息を吐いた。