亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
周りから自分を守るかの様にそこに立ち、冷たい視線の多くを遮っていたのは………紛れも無い、あの、妙に陽気で風変わりな。
「………ア、オイ…」
飛来してきたナイフを弾き返したのは、どうやら彼らしい。
罪人の自分に味方することがどういう事を招くのか、彼は分かっているのか。
下手すれば、彼までも無意味な汚名を背負うかもしれないというのに。
…しかしアオイは、構うことなく周囲の同士達を睨み付ける。
剣を握り締めた彼の手は怒り故か、小刻みに震えている。
「…手の平返した様に、無茶苦茶なこと言いやがって……!…お前らの方が、よっぽど恥だ!!……こいつがどんな奴なのか知りもしないで…!!」
「…アオイ………もう、いい」
宥める様に、喚く彼の肩を掴めば、アオイは納得いかないとでも言うかの様な顔を向けてきた。
………もういい。
充分だ。
孤立した自分を庇ってくれて、嬉しかった。
「…でも、お前…!」
まだ何か言いたげにアオイが口を開く。
周囲からも、無言で鞘から剣を抜く音が聞こえてきた。
こんな所で、意味の無い私闘などしたくない。ましてや同じ狩人が。
殺意に塗れ出した狩人達を、悲しげな目でザイは眺める。
争いの火種が、今にも放たれようとしている。
…これは、私が招いた事か。私、は………どうすればいい。
彼等を止める言葉を、私は持っていない。聞く耳さえも持ってくれないだろう。
私、は………。
私は。
「―――………あぅ、ぁー………ぁー…」
張り詰めた空気を一気に和らげたのは、鶴の一声にしてはやけに弱々しく、儚く、か細くて。