亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「……フフ…可愛らしいお子さんですね。………女の子の様な綺麗な顔立ちですのね。…………歳はこの子と同じだわ……」
クスリと笑って、女性は傍らで眠る子供を愛しげにそっと撫でた。
……マントに包まれて静かに眠る子供。
焚き火の淡い明かりに照らされて浮かぶその寝顔は………驚く程の端整な顔立ちだった。
……睫毛は長いし肌は白いし…青い豊かな長い髪は、波紋の様に丸く垂れていて…………女の子?、と見紛う程だが…………どうやら男の子らしい。
……レトに自覚は全く無いが、自分と同じ位の美少年がここにスヤスヤと眠っている。
「…………私は……サリッサ。………誠名はサリッサレム=エスと申します…。………………………………………この子は、ユノという名です……。……………………ちょっと困った子で………こうやって寝ている間は大人しくて良いんですけどね…」
苦笑しながらサリッサは言い、ユノの頭を再度撫でた。
………その微笑ましい母子の光景を、レトは微動だにしない瞳で、ただじっと凝視していた。
「……………それで…」
不意に、ザイは低い声を発し………真剣な面持ちでサリッサに顔を向けた。
………同様にサリッサも笑みを引っ込め、黙りこくった。
「………………………………貴女方親子は……一体どういう依頼をしていた……?……………不躾な質問だが……こうなった以上、私には訊く義務がある………」
「………」
…サリッサはスッと焚き火に視線を移した。
ちょっとだけ、向かいのレトと目が合った。